「蓬生!キスしてもっ、いい!?」
「………えぇけど、えらい突然やね」
恋人の突然のお願い。
けれど、恋しいお人に求められて困ることなんて、ひとつもあらへん。
籐椅子に腰掛けて読んでいた本を閉じて、膝に置く。
「ほな、おいで」
「ち、違うの。あたしがするから、蓬生は…」
「あんたからしてくれるん?嬉しいなぁ…ほな、任せよか」
赤い顔してやって来たのが、今じゃ首まで赤う染まっとる。
キスしてくれるんは嬉しいけど、あんまりじらさんどいて欲しいわ。
「じゃ、じゃ…いく、ね」
「…ムードの欠片もあったもんやないね」
「いいのっ!発展途上国なの!」
「いつから国になったん」
「どっちでもいいのーっ!!」
「まぁ、俺はあんたからキスが貰えれば、それでええけどね…」
ほんの少し腰を浮かせて椅子に浅く腰掛けると、顔を彼女の方へ近づける。
「ほな、キス…してや。待ってるのも、辛いんやで?」
「……う、うん」
目を閉じて、彼女が近づいてくるんを待つ。
chu…
「…」
目を開けて不満気に睨みつけても、目の前のお人は妙に達成感に溢れた顔をしとる。
恋人のキスを待っとった身に、鼻先へのキスはないやろ。
「よし!出来たっ!!」
「あかん…全然あかんよ」
「いいんだもん!キスはキスだもん!」
無言での手を掴んで、小さな体を抱き寄せる。
「はぁ…最初から教えんとあかんね」
「え、やっ、い、今はいいっ…」
「今は……あぁ、なるほど。ひょっとして2階で様子を伺ってはるお人が気になるん?」
「え゛!!!!!」
心の底から驚いた声をあげ、が視線を動かした様を見て、彼女が声をかける前に頭上から聞こえた賑やかな声に合点がいった。
「大方、罰ゲームかなんかなんやろ」
「うぅ…」
「考えたお人の常識を疑うわ」
「こ、恋人がいる場合って前置きで!いない場合は、気になる人にキスか、全員にアイス奢るっていう…」
「なんや…俺とのキスはそれぐらいの価値なん」
抱き寄せたの体を、ひょいっと抱き上げ膝に乗せる。
「…おしおきが必要やね」
「あのっ、蓬生!上!!窓、窓からっ」
「だから言うてるやろ…おしおきや…って」
ゲームに参加してる人間は大体想像がつく。
遊ぶことは悪いと思わんけど、こういうのは…面白ないわ。
「…目、閉じたらあかんよ」
「む、無理無理無理っ!」
全力で首を振ると鼻先を触れ合わせ、声色を僅かに下げる。
「閉じたら、キス以上のことも、ここでするで?」
「ハイ!?」
「…されたいって言うなら、喜んでお相手させて貰うけど」
「やっ、やだっ!」
「せやったら、ええ子に目…開けとき」
泣き出す一歩手前のような可愛い顔を、他の奴に見せるんは癪やけど…けど、俺やから見せる表情なんだっていうのを、皆に知っといて貰わんとあかんね。
「うっわ…土岐さん、マジ…ドS!ちゃん、かわいそぉ〜」
「って、本当にしてんのか?」
「してるしてる、もー…ぶっちゅーって感じ」
「うわーっ、やめろっ!音にして言うな!リアルに想像しちまう!」
「あぁ…こら、水嶋。いい加減に見るのをやめなさい。その…し、失礼でしょう」
「だってー部長、ちゃんと見ておかないと、ちゃんが罰ゲームクリアしたかどうかわからないじゃないですか」
「そんなの関係…あるか…っ!」
「痛〜〜いっ!火積先輩乱暴〜っ!!」
「………は罰ゲームクリアか」
「いや、リアルに採点表つけてんなよ…律」
「さぁ、が戻ったら続きをはじめるぞ。今度こそ俺の勝ちだ、如月」
「勝負はこれからだ」
「…いや、も…………なんでもいいや」
ゲームをしていたのは、えー…わかるかしら(苦笑)
新、響也、律、火積、千秋、ユキ、かなでちゃん、ニア…でもってヒロインです。
罰ゲームは皆が1つずつ考えたのが箱の中に入ってて、負けが何回か続くとそこから引くって感じのでした。
で、まぁこの罰ゲーム考えたのは新ってことで。
あわよくば、誰かにちゅーして貰いたかったってことで。←適当だな、おい
関係ないけど、蓬生は籐椅子が似合う気がしてなりません。
美人はいいなぁ…(うっとり)